事例

Yahoo! DMPとCRMシステムの連携が、潜在"優良"顧客との出会いを導く

2017年04月12日

CRMシステムとYahoo! DMPを連携させた仕組みづくりで、新たな優良顧客層の獲得を可能にした株式会社ニッピコラーゲン化粧品にお話を伺いました。

品質を追求し、コラーゲン配合のサプリメントや化粧品を提供

1907年創業、今年で110周年を迎えた株式会社ニッピ。世界で初めてコラーゲンの可溶化に成功した同社は、コラーゲンの分野における日本のパイオニア的存在で、研究所や工場も所有しています。ニッピのグループ企業として、長い歴史の中で培われた技術とノウハウを活かし、コラーゲン配合の高品質なサプリメントや化粧品を提供しているのが、株式会社ニッピコラーゲン化粧品です。

同社での従来の広告施策としては、同封同梱のチラシ広告やテレビCMなど、紙・マス媒体が中心でしたが、新規顧客獲得のため、オンラインでの施策にも注力するようになりました。そこで同社と付き合いの長い広告代理店である株式会社ピアラと協力し、ウェブ上での集客やマーケティングを強化すべく新たな施策に取り組みます。

株式会社ニッピコラーゲン化粧品 保木 円佳氏

株式会社ニッピコラーゲン化粧品 宣伝部 WEB課 主任 保木 円佳氏は、「従来、ウェブでのお客様の誘導施策はリスティング広告とアフィリエイトが基本でしたが、新しいお客様層を広げるという面では苦戦していました」と話します。株式会社ピアラ コンサルティング部 マネージャー 菅原 佳穂氏は、「指名系キーワードでの検索により一定数は流入があるものの、誘導できるお客様の数には限りがあります。ウェブからの流入を増やすためには、従来の手法を見直す必要がありました」と説明します。

株式会社ピアラ 菅原 佳穂氏

また、ウェブ経由の顧客の場合、サンプルを購入後、継続して本商品の購入へつながる割合が低いという課題もあり、顧客との適切なコミュニケーションの必要性から、CRM(顧客管理、Customer Relationship Management)システムの導入へ至ります。

そこでYahoo! JAPANのグループ企業であるシナジーマーケティング株式会社が提供する、クラウド型のCRMシステム「Synergy!(外部リンク)」を導入。お客様それぞれに合ったタイミングと内容でメールを配信するなど、One to Oneのコミュニケーションを実現したいと考えました。

CRMデータを基に既存顧客を分析し、未だ見ぬ優良顧客との出会いを画策

今回の取り組みはそれだけではありません。既存顧客の分析を実施した上で、CRMとYahoo! DMPを連携。CRMデータを活用したYahoo!ディスプレイアドネットワーク(以下、YDN)での広告配信を実施し、新規顧客の獲得へと繋げたのです。

シナジーマーケティング株式会社 東日本事業部 パートナーエンゲージメントグループ マネージャーの金沢 信介氏は、「具体的に何をしたかという話ですが、ニッピコラーゲン化粧品様の顧客データをDMPに投入し、購買見込みの高いターゲット層へYDNで広告を配信しました。過去にも他社の事例で、Yahoo! DMPと弊社のCRMを連携した広告配信において成果を残しており、ニッピコラーゲン化粧品様の課題をはじめて聞いたとき、CRMデータを広告へ活用することで、課題解決に繋がると確信しました」と話します。

シナジーマーケティング株式会社 金沢 信介氏

ヤフー株式会社 マーケティングソリューションズカンパニー エリア・オンライン営業本部の木佐木 陽允も加わり、まずはニッピコラーゲン化粧品で所有する顧客データの種類、ボリュームの確認から始め、具体的な施策の策定へと動き始めます。

「4社で話をし、CRMとYahoo! DMP、YDNを活用して"商品を継続して購入いただける見込みの高いターゲット層"に絞って広告を出し、新しいお客様にサンプルや本商品を購入いただくという施策を提案しました。具体的な手法としては、CRMデータを基に、商品を継続して購入されているお客様のデータをYahoo! DMPへ投入し、YDNの類似拡張機能を利用して広告を配信します。Yahoo! JAPAN内における行動履歴を基に解析し、ウェブ上の行動履歴が"商品を継続して購入されているお客様層"と類似しているユーザー層に対して広告を配信できるため、商品を継続して購入いただく見込みが高いお客様への効率的なアプローチが可能となります」(木佐木)。

ヤフー株式会社 木佐木 陽允

シナジー金沢氏、そしてヤフー木佐木の提案を受け、「導入しない手はない」と語ったのはニッピコラーゲン化粧品の保木氏。しかし、施策の重要性について、社内での共通認識を持ってもらうために幾度かの説明を要したと言います。

「YDNは過去にも実施した実績はありましたが、CPAが若干高かったこともあり、効率重視でリスティング広告やアフィリエイトの比重が重くなりがちでした。しかし、新しいお客様層の拡大のためには潜在層へのアプローチが重要であり、YDNなしでは実現できません。しかも今回はCRMとYahoo! DMPの連携でさらなる効果を期待でき、きっとうまくいくと思いました」と話します。

社内でのコンセンサスもとれ、いざ広告の配信へ。今回は"商品を継続して購入されているお客様層"に類似する層に向けた配信となるため、その定義を4社で策定しました。結果、"本商品の購入回数が3回以上のお客様"と定義づけ、その層に類似する潜在層へ配信することに決定。また、サンプル商品購入後に本商品の購入に至らなかった層のデータを基に、類似する層を広告配信の対象から除外することで、質の向上を図りました。

データの質と鮮度を重視したアプローチで、引き上げ率が倍増

KPIとしては、本商品を初めて注文する際のCPO(注文獲得単価、Cost Per Order)を施策実施前の2分の1に抑えることを目標としました。「効率化は見込めるものの、これほどの大幅な改善は正直難しいのではと思っていました」と語るのは保木氏。

しかしフタを開けてみると、サンプル商品購入後の本商品購入の引き上げ率は2倍以上となり、その結果CPOも半減と、大きな成果を上げることができました。今回の施策では、実際に同社の商品を購入した顧客データを基に拡張モデルをつくり広告を配信するという、より深い情報(CRMデータ)を活用し、顧客の趣向、属性に基づいた配信ができたことが成功の要因と言えます。

木佐木は、「よく言われている話ではありますが、ダイレクトレスポンス領域に限らず、お客様とのコミュニケーションにおいてはお客様の状態(属性や趣向、行動など)を知り、それぞれに最適化したマーケティングが重要だと私も思っております。莫大なデータがあれば行動履歴などの精度向上によりそれに近しいことができると考えていますが、やはりクライアント様の購入履歴など、実際に行動を起こした事実のあるデータは質が良い。DMPはそのデータが持つ可能性を広げるプロダクトです。今回は引き上げ率の向上が課題で、質の高い集客施策が求められましたが、そこで同社の持つ顧客データが大きな武器になります。実際に自社製品の購入頻度が高いお客様のデータを基に、類似する潜在層へアプローチすることで、質も重視しながら新しいお客様層の拡大を実現することができました」と話します。

また、運用面においては、データの鮮度、精度を保つことも重要です。「今回の施策では、化粧品と健康食品とでそれぞれ、"商品を継続して購入されているお客様"と"サンプル購入後に本購入に至らなかったお客様"のデータがあり計4種のデータを利用しました。その中で、複数のデータに所属が混在している場合もあり、データの洗い出しをして精査することで、その後さらに効果を伸ばすことができました。また、顧客データは日々更新されるものですので、施策実施中に顧客データの更新をしていただきました。4社で協力して、チームとなって連携して対応できたことも、成功要因と考えています」(ピアラ菅原氏)。

CRMデータを広告配信に活用し、今後もさらなる課題解決へ

今回の成功を振り返った上で、今後の取り組みとして、裾野をもう少し広げた上での新たなお客様層の開拓、そして化粧品以外の商品と組み合わせたクロスセル施策を保木氏は見据えています。

「弊社の化粧品部門でのメイン商品は、スキンケアクリームナノアルファ。そして健康食品ではコラーゲン100という商品もありますが、それ以外にも多くのよい商品を扱っています。これらをメイン商品と併せて購入いただけるよう、CRM、Yahoo! DMP、そして広告をうまく組み合わせることで、何ができるのか模索し、クロスセルへと繋がる施策を考えていきたいです」と保木氏は話します。

今後の展開として、同社の顧客データから、化粧品と健康食品を両方購入いただいたお客様層、一方しか購入いただいていないお客様層のデータを抽出し、Yahoo! DMPへ投入してクロスセルを期待できる層へ拡張して配信することも検討しています。YDNのみならず、メールでのアプローチも視野に入れているとのこと。シナジーの金沢氏は、「CRMデータを活用した施策は、今後も注力したいと考えています。新しいお客様層へのアプローチには広告、既存のお客様層へはメール施策のイメージが強いですが、既存のお客様でメールを見ない層には、広告でのコミュニケーションも有効です。これまでの枠にとらわれずに、新規、既存のそれぞれのお客様層に合った手法を考えていきたいです」と語ります。

CRMとDMPを連携した広告配信は、活用の幅が大きく広がり、マーケティング課題解決の手段として可能性に満ち溢れています。ヤフーの木佐木は、「データ活用自体は多くのクライアント様からニーズがありますが、CRMデータというお客様のより深いデータの活用となると、発想がない、あっても運用面やセキュリティ面から、導入ハードルが高く感じられることがあります。そこで、CRMデータ活用のノウハウや、オペレーションの負荷を軽減するツールを持つシナジー社と連携して解決していきたいです。また、2017年4月にはYahoo! DMPとYDNの連携において、運用の利便性を高めるシステム改修が行われます。これまで以上に、CRMデータを広告配信にご活用いただく働きかけを行い、クライアント様のさまざまな課題解決に役立てていきたいです」と今後の展望を語りました。

※Yahoo! DMPを利用したYDNへの配信をご希望の際は、お取り引きのある代理店までご相談ください。
「Yahoo! DMP」について

■企業情報

企業・団体名 株式会社ニッピコラーゲン化粧品(外部サイト)
所在地 東京都
従業員数 121名
事業内容 「コラーゲン」の原料国内シェアNo.1(※)を誇る株式会社ニッピのグループ企業。「私たちはコラーゲンの専門家です。」をモットーに、コラーゲンを配合した化粧品や健康食品を製造・販売。
※平成27年度コラーゲンペプチド国内販売量1位(日本ゼラチン・コラーゲンペプチド工業組合調べ)

(当記事は2017年2月の情報をもとに構成しています)