クラス (バンド)
クラス(Crass)は、イギリスのパンク・ロックバンド。1977年から1985年にかけて活動。
概要[編集]
1977年にセックス・ピストルズが巻き起こしたロンドン・パンク・ムーブメントはメジャーシーンではすぐに収斂したが、アンダーグラウンドシーンで復活した。その代表的なバンドである。イギリスの政権が労働党から保守党(サッチャー首相)に移ってからは、とくに反戦、反核、フェミニズム、動物愛護、環境保護等について強力なメッセージを発信し、フォークランド戦争の際は激しい反対運動を行った。アナーコ・パンク(無政府主義パンク)の代表的バンドとして知られる。その人気と影響力の強さにより、左翼と右翼の双方から仲間になって欲しいと求められたが、「左翼でも右翼でもなく、アナーキストである」と第3の立場を打ち出し、両翼から少なくとも敵と見なされることを逃れた。
1977年、ヒッピー世代の元パフォーマンス・アーティストのペニー・ランボー(ドラムス、作詞。フランスの詩人アルチュール・ランボーを私淑していた)と、彼より20歳も若いパンクスのスティーヴ・イグノーラント(ボーカル、作詞)が出会うことにより生まれた。ふたりは互いの詩を見せ合って共鳴し、ランボーが住んでいたコミューン(自給自足の農場と廃屋で、「ダイアル・ハウス」と命名された)で"So What?" と "Do They Owe Us A Living?"のデモを録音し、共同生活を始めた。この「バンド」の噂を聞きつけ、続々とのちのメンバーとその家族たちが集まった。最終的に、ここには12人の人間と20匹の猫が住んだ。
当時、パンク・バンドの発掘に熱心だったスモール・ワンダー・レーベルからファースト・アルバム「The Feeding of the 5000」をリリースした。しかし1曲目の「Asylum」の歌詞が問題となり、2分間の無音トラックとして収めた。この反省から、個人レーベル「クラス・レコード」を設立。これは当時としては前人未踏の冒険であり、ジャケットの印刷はどの印刷所からも引き受けてもらえず、高価な印刷機を自分たちで調達するなど、後のパンクにおける「DIY精神(自分たちでやること)」の手本となった。このレーベルからは、自分たちの作品のほかに、後続バンドといえるポイズン・ガールズ、ザ・モブ、ザウンズ、コンフリクト、キャプテン・センシブル(元ダムド)、ククル(ビョークが在籍)ら、100組近いバンドを紹介している。
アルバム[編集]
- The Feeding of the 5000 (1978年)
- Stations of the Crass (1979年)
- Penis Envy (1981年)
- Christ - The Album (1982年)
- Yes Sir, I Will (1983年)
- Best Before 1984 (1986年)
参考図書[編集]
- ピース・オブ・マウンテン編 『ルーツ・オブ・パンク・ロック』、シンコー・ミュージック、1989年 ISBN 4401612701
- 『セックス・ピストルズ (KAWADE夢ムック)』、河出書房新社、2004年 ISBN 978-4309976747
- 『CRASS』、ジョージ・バーガー著、萩原麻理訳、河出書房新社、2012年、ISBN 978-4309273358