教員の残業、川崎は横浜の半分以下?市の調査に疑問の声
川崎市と横浜市で、市立小中学校の教職員の残業時間が大きく異なっている。月の平均残業時間は、川崎市が19~33時間程度であるのに対し、横浜市ではその数倍だ。川崎市の市民団体は「市は実態を正しく把握していない」と指摘。市教育委員会は横浜市などを参考に調査手法を見直し、早期に実態を調べる考えだ。
両市は2013年度、それぞれ残業時間を調べた。横浜市教委によると、勤務日の平均業務時間は小学校11時間30分(うち残業3時間)、中学校11時間20分(同2時間50分)。月の勤務日を22日として換算すると、残業時間は小学校66時間、中学校62時間強になる。一方、川崎市教委の調べでは、月の平均残業時間は小学校18時間49分、中学校32時間54分だった。
横浜市教委は同年度の12~1月、対象とした32校に任意の2週間を選んでもらい、教職員が15分刻みで業務内容を直接記入した。自宅での仕事時間なども含んでいる。これに対し、川崎市教委は4~6月に教員が校長に自己申告した残業時間のみをとりまとめた。
公立校の教員の給与についての特別措置法などにより、教員には残業代が支給されず、原則として残業をさせてはならないとされている。また、文部科学省は2006年、教職員の健康保持の観点から、全国の自治体に「労働時間の適正な把握」を求めている。
川崎市立校では近年、多忙などから心の病を患い、50~60人程度の教員が休職しているという。働く時間の正確な把握については1月、市議会文教委員会でも議論され、市議からは「両市の教職員の労働時間がそんなに違うとは思えない。自己申告は過少なのではないか」といった指摘が出た。市教委は「客観的な記録を取る必要がある」とし、現場の負担軽減に役立てるため、なるべく早期に実態を調査すると答えた。(河井健)
■横浜市と川崎市の教職員の平均残業時間
【横浜市】 【川崎市】
小学校 66時間 18時間49分
中学校 62時間強 32時間54分
※両市教育委員会の資料から作成。2013年度。横浜市は月の残業時間を出していないため、勤務日を22日として換算。
(朝日新聞デジタル 2017年02月02日 05時31分)
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(朝日新聞社提供)
▼ブラック企業大賞2015ノミネート▼
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セブン-イレブン・ジャパン(本社東京都千代田区、鈴木敏文代表取締役会長兼CEO、井阪隆一代表取締役社長兼COO)は、日本国内に1万6,319店(2015年度)を展開、国内チェーン全店で4兆円超を売り上げる日本最大手のコンビニエンスストアチェーンである。
2013年8月、同社のフランチャイズに加盟する店主4人が、販売期限が近い弁当などを値下げして売る「見切り販売」の権利を同社から妨害されたとして損害賠償を請求していた裁判で、東京高裁は妨害の事実を認め、セブンイレブン側に計1140万円の支払いを命令。14年10月に最高裁が本部、加盟店双方の上告を棄却したことで判決確定した。セブン本部による見切り販売妨害については09年に公正取引委員会が、独占禁止法が禁じる「優越的地位の濫用」に当たると認定し排除命令を出していた。
「見切り販売」に代表されるセブン本部の不当な経営圧迫に対し、加盟店主らは09年に「コンビニ加盟店ユニオン」を結成して団体交渉を要求。同社は「加盟店主は労働者ではない」と主張し団交拒否してきたが、14年3月には岡山県労働委員会が加盟店主らの労働組合法上の労働者性を認め、救済命令を出している。
昨今、学生アルバイトを正社員並みに、しかも学生生活に支障きたすほどの低待遇で使役する「ブラックバイト」が社会問題化しており、コンビニバイトはその代表的な業種である。コンビニ本部各社はこうした問題の責任は個々の加盟店店主らにあるとして自らの責任を否定してきたが、業界にブラックバイトが蔓延るのは、本部が加盟店主らから過酷な搾取を行い、そのしわ寄せが学生アルバイトに及んだ結果であるとも言える。こうした構造はコンビニ各社で共通するものだが、セブンイレブンは業界の圧倒的強者であるほか、日本にコンビニフランチャイズを定着させた先駆者でもあり、業界内における責任も役割も大きく、そして、前記事件がコンビニ業界の構造を示す象徴的な事件であるといえることからノミネートした。
(ブラック企業大賞 公式サイトより)
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暁産業(荒木伸男代表取締役社長)は消防自動車、消防用設備などの販売と保守点検を行う福井県福井市の企業である。同社ホームページによれば会社設立は1951年、従業員数は男性33名、女性11名の44名。
2010年12月、同社の保守点検部門で働いていた当時19歳の男性社員が、自宅で首をつり亡くなった。男性は高校在学中だった同年2月に同社でアルバイトとして働き始め、卒業後の4月に正社員として入社。 だが入社後は、直属の上司(リーダー)から「辞めればいい」「死んでしまえばいい」「相手するだけ時間の無駄」「もう直らないのなら、この世から消えてしまえ」などの暴言を執拗に投げつけられ、11月下旬には鬱状態に陥っていたと見られている。これらの暴言を含め、男性はリーダーからの指導内容を克明にメモに取るよう命じられており、この記録を証拠に福井労働基準監督署は12年7月、男性の自殺原因は上司からのパワハラであると認定した。
その後、男性の遺族は暁産業と上司らを相手取り、福井地裁に約1億1,100万円の損害賠償を求め提訴。会社側は全面的に否認していたが、同地裁は2014年11月28日、「典型的なパワーハラスメント」であるとして、会社と直属の上司に約7,200万円の支払いを命じた(15年9月16日に双方の控訴を高裁が棄却し、判決確定)。
暁産業は今回のノミネート企業中、事業規模からいえば最も小さい会社だが、パワハラ内容の陰湿性に加え未成年の労働者を自殺に追い込んだことの異常性、さらに悪質な違法行為の多くは無名の中小企業で起きていることも考慮し、ノミネートすることにした。
(ブラック企業大賞 公式サイトより)
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フジオフードシステムは、大阪や京都を中心に、「まいどおおきに食堂」や「串家物語」などの飲食店や居酒屋を運営する。同社は従業員の労働時間を改ざんし、長時間労働をさせて残業代を支払わなかったとして、今年8月、法人と当該店舗の店長など16名が労働局により書類送検された。
今年4月、厚生労働省がブラック企業対策として大阪と東京に「過重労働撲滅特別対策班」(通称 かとく)を設置して以来、大阪でははじめての書類送検となる。
各紙報道によると、従業員19人に対して月54〜133時間もの時間外労働をさせたにもかかわらず、割増賃金を払わなかった。またある店長は労働時間を改ざんしたことを「空気感でやった」などと話し、2人の従業員に関しては残業代も未払いだったとされている。従業員のなかには、長時間労働が原因で精神疾患をわずらい、仕事を辞めた人もいるという。
フジオフードシステムは、過去にも労働局からの是正指導があったにもかかわらず、改善が見られないとして今回の書類送検にいたった。
厚労省がブラック企業対策に乗り出して以来、大阪で初の書類送検、是正指導を受けても繰り返し長時間労働や割増賃金の不払いを続けていたため、ノミネートした。
(ブラック企業大賞 公式サイトより)
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エービーシー・マートは、「ABCマート」名の店舗を全国で約800店を運営し、靴の専門店である。
ABCマートは、会社と労働者間で合意する36協定で定めた残業時間(79時間)以上の月97〜112時間を残業させたとして、労働基準法違反の疑いで、今年7月、書類送検された。
今年4月、厚生労働省がブラック企業対策として東京と大阪に「過重労働撲滅特別対策班」(通称 かとく)を設置して以来、はじめて書類送検されたケースである。
同社は、労働局から繰り返し是正指導されていたが、改善が見られなかったという。
7月2日発表のプレスリリースでは、再発防止のために労務管理システムなどで「全店舗でこのような問題が生じない体制を確立して」いると発表している。
各紙報道によると、現場は恒常的に人手不足。従業員を減らす一方、働く人には長時間労働をしいているという。なお、ABCマートは最高利益を16年連続で更新している。
厚労省がブラック企業対策に乗り出して以来、初の書類送検事案であり、36協定違反という極めて基本的な法規範に対する違法行為であることから、ノミネートした。
(ブラック企業大賞 公式サイトより)
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明光ネットワークジャパンは、個別指導塾最大手・明光義塾を運営する企業であり、この10数年で塾・予備校産業の大きな部分を占めるようになった個別指導塾業界を牽引してきたパイオニアである。明光義塾は全国で教室数2137教室、生徒数13万6890人を数える(うち同社の直営教室は222教室、フランチャイズ教室は1915教室。2015年8月時点)。
個別指導塾では、講師アルバイトに対して、授業以外の業務に賃金が違法に払われない「コマ給」問題が蔓延しており、「ブラックバイト」の象徴となっている。明光ネットワークジャパンに対しても、ブラックバイトユニオン・個別指導塾ユニオンが、同社およびフランチャイズ運営会社の労働条件改善を求め、団体交渉を進めている。
2015年10月には、同社直営の宮城県内の教室に勤務する20代の学生講師アルバイトの申告にもとづき、賃金未払い(労基法24条違反)で仙台労働基準監督署から是正勧告が出された。同社では、授業に対する「コマ給」と、授業外業務に対して1日30分間分の手当が支払われていたが、授業の準備と生徒の見送り、報告書の記入、片付けなどで1時間を超える未払い労働が恒常的にあったという。同学生は「生徒のための仕事なのに賃金が払われず、納得いかなかった」と語っている。
また全国の明光義塾のフランチャイズ教室でも、今年8月には茨城、10月には埼玉、東京、大阪で、労基署の是正勧告が出されている。
明光ネットワークジャパンが運営する明光義塾は個別指導塾最大手であり、かつ、子どもに対する教育を行うことを業とするものであって、より高い遵法意識が求められるにもかかわらず、全国各地で労働局から是正勧告が出されていることから、ノミネートした。
(ブラック企業大賞 公式サイトより)
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引越社関東は、「アリさんマークの引越社」として全国で営業展開する引越による荷物の運搬等を業とする企業である。引越社関東のほか、株式会社引越社、株式会社引越社関西などのグループ会社で事業を行っている。従業員数はグループ全体で3,965人(平成26年5月末時点)、グループ総売上は273億円(平成25年度)である。
引越社関東は、同社従業員で元は営業職であったA氏をシュレッダー係に配転するなどしていたところ、2015年8月、突如としてA氏を懲戒解雇し、その懲戒解雇の事由を「罪状」などと記載し、A氏の顔写真を入れた書類(罪状ペーパー)を作成、これをグループ内の全国の店舗に掲示した。さらに、同社は同様の文面を従業員に送る社内報にも掲載し、これをグループ会社に所属従業員に送付した。
A氏が懲戒解雇の無効を訴えて東京地裁に仮処分を申立てたところ、同社はすぐに解雇を撤回し、復職を命じた。ところが、A氏が出社すると「罪状ペーパー」とされた書類が社内に多数貼り出されており、さらにはA氏の顔写真と「北朝鮮人は帰れ」などの記載のある書類までも貼り出されていた。
A氏の所属する労働組合(プレカリアートユニオン)の抗議行動に対しては、同社幹部らが同労組の関係者に対し、「おい、こらぁ!」「なにしとんねん、われえ!」「言うてみい、こらぁ!」などと尋常ではない迫り方をするなどした。なお、この場面をおさめた動画が話題となり、you tubeで190万回以上再生されるに至った(10月26日時点)。
同社に対しては、A氏からシュレッダー係への配転無効の裁判が起こされているほか、同社が引越荷物の破損等に対する損害を従業員に全て負わせて給与から天引きしていたことから、全国各地でこれを取り戻す裁判が起こされている。
他にも、同社は、採用基準に人種差別、部落差別と疑われる基準を持っていることがA氏や元従業員らから告発されている。
同社は「アリさんマークの引越社」として赤井英和氏を起用したテレビCMも多く行っている有名企業であるにもかかわらず、上記の通り労働者や労組に対する激しい対応が明らかになったため、ノミネートするものである。
(ブラック企業大賞 公式サイトより)
▼ブラック企業大賞2016ノミネート▼
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千葉県千葉市に本社を置き、JASDAQにも上場する棚卸し代行業者。
スーパー、コンビニ、ドラッグストアなど小売店を顧客とし、同社ホームページによれば連結売上高218億2900万円 (2015年3月31日現在)、従業員数686名(2016年3月末現在)、全国に直営50拠点、FC36拠点(同)を擁する。
同社は2016年5月19日、違法な長時間労働を行っていたとして千葉労働局から是正勧告を受け、同日厚生労働省により社名を公開された。
同省の発表によれば、エイジスでは4カ所の営業所で合計63人の従業員が月100時間を超える残業を違法にさせられており、1ケ月あたりの時間外労働が最長で197時間におよぶケースもあった。
厚労省では2015 年5月から、複数の事業場で違法な長時間労働を行う企業に対しては、都道府県労働局長が是正指導をした上で、企業名を公表するとの方針を決定。エイジスの事件は実際に公表された全国初のケースとなった。
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同社は広告代理店として日本において最大手企業である。
2015年12月25日、24歳の新入社員・高橋まつりさんが長時間労働の末に自殺した。その後、労働基準監督署は、これを過労によるものとして、労災として認定した。時間外労働が月105時間であったという。
これに加えて、「はたらきたくない 1日の睡眠時間2時間はレベルが高すぎる。」など、彼女が残した過酷な労働実態を示すツイートの数々も明らかとなった。加えて上司によるパワハラを疑わせる書き込みまで残っていた。
電通では、「殺されても放すな、目的完遂までは……」などの『鬼十則』に象徴される経営側の精神訓の下、13年前には入社2年目の男性社員の自殺が過労死と認定され、3年前にも30歳の男性社員の病死が過労死と認定されている。
こうした状況下、電通は十分な改善策を実施しなかった。厚生労働省は10月に抜き打ちで電通本社への強制捜査を実施し、労働時間を正直に申告させず過少報告させる組織的な体質も浮かび上がっている。
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同社は関東地方を中心にディスカウントストアを展開する企業である。
2016年1月28日、東京労働局は、同社と店舗を担当する支社長や店長ら計8人を、東京都内の店舗で従業員に違法な長時間労働をさせたとして、労基法違反容疑で東京地検に書類送検した。36協定で定めた時間外労働の上限である「3か月で120時間」を超えて、最長415時間45分もの時間外労働をさせた疑い。
親会社のドンキホーテホールディングスは、「深くおわび申し上げる。グループ全体で労務管理に関する指導が不足していた」旨のコメントを発表した。
2016年11月9日、ドン・キホーテ社は、2014年10月~2015年4月の間、都内3店舗の従業員4人に対し違法に時間外労働をさせたとして東京簡易裁判所から略式命令が出され、罰金50万円を納付した(支社長ら8人は不起訴処分)。
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同社は印刷サービスを行う企業である。
2010年3月、入社1カ月半の新入社員(当時26歳)が印刷機に巻き込まれて死亡した。全印総連京都地連によれば、当時会社は、この悲惨な死を業務遅延の理由として「機械の不具合」と発表した。同社では過密労働で離職率も高く、自らも月80時間前後の「過労死ライン」と見られる残業を繰り返していた労働者が、2013年に組合(全印総連ユニオン京・プリントパック京都分会)を結成した。
これに対し会社は、組合員に対して配転を命じ、残業時間の長さを会社への貢献度と査定して組合員に対し昇給差別や夏季・年末一時金などのボーナスを支給しないなどの扱いをした。
同労働組合が京都府労働委員会に救済を申し立てたところ、2016年7月19日、府労委は、同社による労働組合への不当労働行為を認め、賃金や賞与の差額を支払うよう命じた。
なお、同社は、この命令を不服として中央労働委員会へ再審査を申し立てている。
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関西電力株式会社は、近畿地方などを営業区域とする電力会社である。
2016年4月20日、高浜原発1、2号機の運転延長申請を担当していた管理職の男性が自殺しているのが見つかった。報道によると、男性は技術系管理職で、原子力規制委員会へ提出する工事計画を担当。日々、規制委の対応に追われ、同年1月には1ヶ月の残業時間が100時間を超えるようになり、2月には200時間、3月以降は都内のホテルに滞在しながら業務に当たるようになっていた。なお、男性は労働時間規制が一部適用除外される「管理監督者」であった。
男性が亡くなったのは、審査が「合格」となった当日。男性が担当していた高浜原発1、2号機は、2015年7月7日の期限までに審査手続きを終えなければ廃炉が濃厚だったといわれており、男性に大きな重圧がかかっていたと見られる。
労働基準監督署は、男性の自殺は長時間労働による過労が原因だったとして労災と認定した。
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同社は主に運送事業を行う企業である。
2010年3月、佐川急便に入社した男性は、東北支社仙台店(現南東北支店仙台営業所)で経理などを担当。2011年12月にうつ病の診断を受け、同月26日に自宅において制服姿で首をつって自殺。2012年2月、遺族は仙台労基署に労災の申請をしたが、同年12月には不支給処分となる。その後、訴訟が提起された。
2016年10月27日の仙台地裁判決によると、男性は直属の上司から日常的に仕事のミスで注意を受け、自殺する直前にはエアガンで撃たれたり、つばを吐きかけられたりする暴行や嫌がらせを受けていた。SNSにもその旨を投稿、自らのスマートフォンにも「色々頑張ってみたけどやっぱりダメでした。薬を飲んでも、励ましてもらっても、病気の事を訴えても理解してもらえませんでした」と書き残していた。
上司はうつ病になり「退職したい」と訴える男性に「そんなの関係ない。迷惑かけられて大変だった」と残務処理を指示していた。
判決は一連の行為を「社会通念上認められる範囲を逸脱した暴行または嫌がらせ行為」とし、うつ病発症は業務上のものであると認めた。
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大阪市中央区に本社を置き、「和食さと」「すし半」「さん天」などの飲食店を全国展開する東証一部上場企業。
報道によれば、同社では2008年4月から15年11月までに長時間労働や残業代の未払いなどで、全国の労働基準監督署から18回にわたる指導を受けてきたが、度重なる指導にも関わらず改善が見られなかったことから、2015年12月、大阪労働局の過重労働撲滅特別対策班(かとく)が強制捜査に踏み切った。
また16年9月には、本社と大阪府内の4店の従業員計7人に三六協定を大幅に超過する残業をさせ、さらにその割増賃金の一部が未払いだった労働基準法違反(32条<労働時間>、37条<時間外、休日及び深夜の割増賃金>)の容疑で、法人としての同社のほか、同社の事業推進部長や店長など計5人が大阪地検に書類送検された。
なお同社ではかとくの強制捜査を受け15年12月に調査委員会を発足させており、その結果判明した約650人の従業員に対する総額4億円あまり(2014~15年分。立件された分も含む)の未払賃金も払ったという。
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京都市右京区にある真言宗御室派の総本山寺院。1994年には世界文化遺産にも登録されている。
2013年、仁和寺が境内で運営する宿坊「御室会館」の元料理長の男性(判決時58歳)が、長時間労働により精神疾患を発症したとして、同寺を相手取り慰謝料や未払賃金の支払いを求めて提訴。2016年4月12日、京都地裁は男性の訴えを認め合計約4200万円の支払いを命じた(仁和寺は控訴せず判決確定)。
男性は2004年12月に料理人として仁和寺に正規採用され、翌2005年から料理長として調理や献立作成などを担当。しかし、2011年春頃からの時間外労働がほぼ毎月140時間以上で、多い月では240時間以上、年間の勤務日数が356日(うち349日は連続して出勤)という「極めて過酷な長時間労働」(判決文より)を強いられた。
男性は2012年8月に抑うつ神経症と診断(2013年7月労災認定)され休職を余儀なくされたが、この間仁和寺は、「料理長は管理監督者である」との理由で、男性に支払うべき時間外手当・休日手当を払っていなかった。
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大手デイサービス企業である株式会社日本介護福祉グループが運営する「夜間ケア付き小規模デイサービス」事業である「茶話本舗」のフランチャイズ店舗(ディスグランデ介護株式会社)に労働基準監督署から是正勧告が出された。是正勧告の内容は、茶話本舗で働く女性に対する賃金未払いや休憩をとらせなかったことである。この女性を支援する「介護・保育ユニオン」によれば、未払い賃金はおよそ74万円になるという。
同ユニオンに相談した女性によると、人手が少なく、日勤では10人近い利用者を2人で見ることもあるため、利用者の入浴や排泄があれば、1人で残りの利用者に対応しなければならない。そのため勤務中はまともに休憩を取ることができなかった。夜勤は1人体制で、呼び出しもあるため十分な仮眠を取れず、日中できなかった事務作業を行なっていた。
このように、実際には休憩はなかったにもかかわらず毎日1〜2時間ほどが「休憩時間」として労働時間から引かれていた。
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同社は郵便事業の運営と郵便局の運営を行う企業である。
勤務していた男性(当時41歳)は2011年4月から福岡県飯塚市の郵便局に勤め、6月からうつ病などで休職。12月に販売用の年賀はがきを受け取るため局を訪れた際、駐車場に止めた車内で心疾患のため死亡した。
男性の遺族は、死亡したのは上司のパワーハラスメントによるストレスが原因だとして、同社に1億円の損害賠償を求め提訴。2016年10月26日、福岡高裁で判決が言い渡され、死亡とパワハラの因果関係は認めなかったが、裁判所は、局長が同年5月の面談で「いつやめてもらってもいいぐらいだ」と発言したことなどをパワハラと認定し、男性のうつ症状悪化との因果関係を認め、同社に330万円(1審では220万円)の支払いを命じた。
郵便職場では、2016年10月に愛知県新城市の郵便局課長の遺族が、部下からのパワハラによる自殺として提訴しているほか、さいたま新都心郵便局ではパワハラ飛び降り自殺として妻が2013年に提訴した事件が和解で決着しているなど、パワハラに関する問題が多数指摘されている。
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