躍動感溢れる写真でスポーツの興奮を伝える、イギリス人フォトグラファーのパリ・ラオ。
最新技術を駆使してモデルのスポーツ選手の動きをカメラに収め、映画的要素を盛り込んで感動させるパリを、今月の注目のコントリビューターとして紹介します。
号砲がパーンと鳴り、ランナーが一斉に飛び出すと、観客に電波が駆け巡る。これこそがスポーツ観戦の魅力であり、iStockフォトグラファーのパリ・ラオが写真で表現しようとしていることだ。
イギリスのケンブリッジを拠点に活動している彼の写真は、独特な雰囲気と映画のような照明効果により、ヒーロー映画から切り出したような、静止画と見間違えるほどのクオリティを誇っている。
「スポーツから生まれるドラマと感動に魅力を感じています」と話すラオ。だが、意外にも彼自身は熱狂的なスポーツファンではないそうだ。「スポーツ選手は、動き1つ1つが驚くほど力強くて素晴らしく、人々を惹き付ける要素を持ったヒーロー。それを表現しようと思ったのです」
「ビジュアルを使うと、自分自身を自然と表現できます。このコミュニケーションの仕方は、きっと生まれつきのものだと思います」
「プロまたはセミプロのスポーツ選手でモデル業もこなしている人と一緒に仕事をしています。彼らはスポーツのことを本当に理解しているだけでなく、カメラの前での見せ方や動き方も分かっているので、撮影中に私があれこれ言わないようにしています。大まかな指示を出すだけで、あとはモデルに任せると、自分が予想しなかったことが起こり、驚くべき結果が得られることがよくあります」と話すラオ。「ビジュアル的にどのようにしたいのかについて、私自身のアイデアはあっても、それが実際のスポーツ試合ではありえない場合は、モデルに遠慮なく言ってもらうように勧めています。頭の中に最初に浮かんだビジョンよりも真実を優先することで、大抵は写真のできあがりに驚かされるのですが、それがまた面白いのです。何をどこに配置するかが最初から決まっていたら、番号順に完成させる塗り絵みたいで退屈ですから、その場の状況に身を任せ、どう展開するのかを楽しみます」
スタジオでスポーツ選手を撮影した後、フォトショップで背景を加工し、異なる撮影時からの要素を組み合わせて写真を作り上げていくラオ。最近では、CGI(コンピュータ生成画像)も活用してアイデアを形にしているそうだ。
「カメラでは現実的に表現できないアイデアでも、CGIならコンピューターを使って表現できます。テクノロジーはどんどん進化しています。私たちは素晴らしい時代に生きており、刺激的な方向へ向かっています。360度写真やバーチャルリアリティなど、写真の新たな進歩によって、独創的な方法で作品を制作する機会が増えています」
テクノロジーが進化したおかげで、ラオのクリエイティビティの可能性は無限になったのだ。
「目を閉じて頭の中にイメージを思い浮かべてから、アイデアを現実化するまでの時間を短縮するのが、究極の夢ですね」と話すラオ。「新しい技術のおかげで、この夢の実現に一歩一歩近づいています。今は、自分を制限するものは自分の想像力のみです」
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「この写真は12月に撮影しましたが、実は暖かいスタジオで撮影したものです。モデルのキャサリンは、スポーツウェア会社とスポンサー契約を結んでいるため、スキーウェアや小物は彼女が提供してくれました。素晴らしいスキーヤーである彼女は、静止した状態でもスキーをしているように見せる方法を知っていました。最終作品におけるキャサリンのポーズは、2つの写真から構成されています。多数の写真を組み合わせてスキーリゾートを作り上げ、それを背景に彼女を配置しました」