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天国への扉をたたく者たち

ヘブンズ・ドアについて

映画「ヘブンズ・ドア」は余命わずかと宣告された男女二人が海を目指して旅をするというロード・ムービーです。2009年2月7日に後悔されました。「鉄コン筋クリート」のマイケル・アリアスが監督を務め、TOKIOの長瀬智也と「女王の教室」などの福田麻由子が主演しました。1997年公開のドイツ映画「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア」が原案になっています。原案のほうは男二人でジョークを交えながら旅をする乾いたユーモアが特徴でしたが、こちらは歳の離れた男女二人の性別・年齢差を超えた愛情を描いています。

ストーリー

これまで自由奔放に生きてきた勝人は、車の修理工として働いていた会社を突然解雇されてしまいます。社長の手から先日行なわれた健康診断の結果が渡された勝人は、そこに「再検査」の文字を見つけます。最近激しい頭痛に襲われることが多い勝人は、病院へ向かいます。CTスキャンなどの精密検査を受けた結果、脳に腫瘍があることが分かり、医者からは「いつ死んでもおかしくない」と告げられます。そのまま入院させられた勝人は突然の余命宣告に自暴自棄になり、病室でタバコを吸い始めます。そんなとき、同じ入院患者である14歳の少女・春海に出会います。彼女は7歳からこの病院に入院していて、骨肉腫を患って余命1ヶ月と宣告されたばかりでした。意気投合した二人は、病室を抜け出し、前の患者が置いていったテキーラをもって病院の厨房に侵入します。レモンと塩でテキーラを飲む二人。勝人は塩を見て「海の匂いがする」といいます。ところが入院生活が長い春海は海を見たことがないというのです。勝人は春海をからかい、「天国で今一番流行っているのは海の話をすることだ」などといいます。落ち込む春海を見て酔った勝人は、「海に行こう」と言い出します。一方その頃、K3ホールディングスの社員である安達と辺見は、社長の車を運転して社に戻る途中で青年を轢いてしまい、勝人たちのいる病院に駆けつけていました。勝人はその車を盗み、「いい海がある」といって西を目指します。勝人は夜通し車を運転し、海に向かいます。途中でガソリンスタンドに寄りますが、二人ともお金を持っていないことに気づきます。車の中にお金がないか捜す二人でしたが、出てきたのはなんと拳銃。驚く二人を見た店主は強盗だと勘違いします。勝人はそれに乗じて店の金を盗み、逃げ出します。泥棒するなんて…と怒る春海を、ちょっと借りただけだとなだめる勝人。高速を降りると、東京の高層ビル群が見えてきます。「ちょっと寄り道してくか」と原宿へ向かう二人。おしゃれな洋服を見てはしゃぐ春海でしたが、勝人はガソリンスタンドで盗んだ3万円しか持っていません。銀行にお金を下ろしに行きますが「残高が足りません」といわれる始末。持ってきた拳銃を出そうかと迷う勝人でしたが、客が多く躊躇してしまいます。銀行を出た勝人は、郵便局へと向かい、強盗を決行。数百万の金を脅し取り、春海の待つ店へと戻ります。札束を店員に突きつけて「つりはいらねえ」と颯爽と店を去っていくのでした。ところがその時、勝人に突然の発作が襲います。何とか薬で持ちこたえた勝人でしたが、あたりはもう薄暗くなってしまいました。なぜそこまでするのかと問う春海に対し、勝人は「最後くらい最高のエンディングが欲しくなったんだ」と語ります。勝人の気持ちが少しだけ分かった春海。荷物を車に詰め込もうとトランクを開けると、怪しい風呂敷包みを見つけます。開いてみるとお重の中にはまんじゅうが、そしてその下からは札束が見つかりました。二人は驚きますが、天からの恵みとばかりにその金で豪遊し始めます。高級ホテルのスイートルームに泊まり、高級料理を堪能する二人。買った服に着替えておしゃれを楽しんだ二人は死ぬまでにしたいことを書き始めます。春海のしたいことは「かっこいい男の子とキス」、勝人のしたいことは「綺麗なお姉さんと…」。怒る春海の前で、再び発作に襲われる勝人。薬で落ち着いた頃にはもう朝になっていました。テレビでは勝人が春海を誘拐し強盗しながら逃げていると報道されています。春海の母親のところにも報道陣が押し寄せています。ホテルの外を見るとパトカーが。二人は急いで逃げ出しますが、非常階段で警察に見つかってしまいます。とっさに春海に拳銃を突きつける勝人。警官が怯んだ隙をついて、制服を奪い、それを着て車に向かいます。ところがそこで、車を取り返しにきたK3ホールディングスの安達と辺見に出くわしてしまいます。しかし安達と辺見は、勝人たちを警官だと思い込み、「この車盗まれたものなんです」と訴えます。勝人は辺見に車の鍵を返し、代わりにパトカーを盗んで逃走します。警察とK3ホールディングスを振り切った二人は遊園地へと向かいます。楽しく遊んだ二人でしたが、またも勝人が発作に倒れます。薬がないことに気づいた春海は、薬の袋を握り締め薬局へと走ります。雨の中ようやく薬局にたどりついた春海でしたが、この薬は医者の処方箋がなければ出せないと断られてしまいます。しかし薬がなければ勝人は死んでしまう…春海は店員に拳銃を突きつけます。どうせおもちゃだろ、と相手にしない店員。春海は意を決して引き金を引くのでした。春海が手に入れた薬のおかげで一命を取り留めた勝人。二人はタクシーに乗りホストクラブへと向かいます。春海の最後の願い「素敵な男の子とキス」を叶えるためでした。しかしそこへK3ホールディングスの安達と辺見がやってきます。勝人と春海は捕まり、拉致されてしまいます。K3ホールディングスの社長の前に突き出された二人。社長は勝人に「まんじゅうはどこだ?」と問います。「全部使った」という勝人に拳銃を突きつける社長。しかし、手下であるはずの安達と辺見が社長を裏切り、社長に拳銃を向けます。その隙に勝人と春海は逃げ出します。しかし外は既に警察に包囲されていました。そんな時勝人に4度目の発作が。「死にそうなんだよ!救急車呼んでよ!」と泣き叫ぶ春海。救急車の中で、目を覚ます勝人。二人は隙を見て救急車から逃げ出し、勝人の実家へと向かいます。勝人の本当の願いは「母親に会うこと」だったのです。しかし、今まで自分勝手に生きてきた勝人に母親に合わせる顔はなく、遠くから母の背中を見つめるのが精一杯なのでした。「死にたくない」と泣き崩れる勝人を春海は優しく抱きしめます。二人は勝人が子供の頃よく遊んだという海へ向かいます。青空の下、肩を並べて海を眺める二人。勝人は静かに目を閉じるのでした。

キャスト

メインキャラクター

  • 青山勝人…長瀬智也
  • 白石晴海…福田麻由子

K3ホールディングス

  • 社長…長塚圭史
  • 辺見…田中泯
  • 安達…大倉孝二
  • 秘書…Sachi

県警本部刑事部

  • 部長・長谷川…三浦友和
  • 捜査一課・岸谷…黄川田将也
  • 捜査二課・御子柴…和田聰宏
  • 事務員・米沢…霧島れいか

その他

  • 春海の母…薬師丸ひろ子
  • 春海の義父…井田國彦
  • 医師・三宅…北見敏之
  • ガソリンスタンド店主…不破万作
  • 薬局店主…徳井優
  • ショップ店員…吉村由美
  • ホストクラブの客…土屋アンナ
  • ホスト…二宮和也
  • 車工場の事務員…今宿麻美
  • 車工場の先輩技師…柄本佑
  • 車工場の社長…諏訪太朗
  • 入院患者…納谷六朗
  • 入院患者…谷津勲
  • アナウンサー…阿部知代

スタッフ

  • 監督…マイケル・アリアス
  • 脚本…大森美香
  • 音楽…Plaid
  • エグゼクティブ・プロデューサー…豊島雅郎、亀山千広、藤島ジュリー景子
  • スーパーバイザー…小川真司、石原隆、長松谷太郎
  • プロデューサー…宇田充、関口大輔、原藤一輝
  • 撮影…小松高志
  • 照明…蒔苗友一郎
  • 録音…石貝洋
  • サウンドデザイン…Mitch Osias
  • 美術…岩城南海子
  • 装飾…松田光畝
  • スタイリスト…片柳利依子
  • ヘアメイク…酒井香
  • スクリプター…高田優
  • 編集…武宮むつみ
  • VFX…大萩真司
  • Bカメラ撮影…相馬大輔
  • VE…宇津野裕行
  • キャスティング…杉野剛
  • 助監督…山本透
  • 製作担当…的場明日香
  • ポストプロダクション・プロデューサー…篠田学、中山賢一
  • ラインプロデューサー…若林雄介

感想

長瀬智也くんが久々の映画主演ということで観にいってきました。脚本は「マイ☆ボス マイ☆ヒーロー」でお馴染みの大森美香さん。マイボスでの長瀬くんはハマリ役でしたね!ちょっとお馬鹿な男性の役が似合うんですよね。今回もそういう役だったので、やはりハマってました。同じく主演の福田麻由子ちゃんも良かったですねー。無邪気な少女なんだけど、はしゃいでいる中にも心に闇というか病気を抱えているちょっとした暗さが見え隠れして、これは演出のおかげなのか彼女のもつ魅力の一つなのか分かりませんが、役どころをしっかり理解して演じている感じがしました。マイケル・アリアスは相変わらず画の切り取り方が上手ですね。「鉄コン筋クリート」はアニメーションでしたが予告編の時点で映像が凄すぎて鳥肌たつぐらいでしたから。今回も期待通りでした。普段見慣れた東京のビル郡が、撮り方を変えるだけでこんな風になるのかと感動しました。厨房のレモンのシーンなんかは写真にして飾っておきたいくらいです。最後の海も普通の海なんですけど、余命宣告を受けて未来がない二人に対し、夕日ではなく青空というこれからを感じさせる景色にしたのはすごいと思います。ただ、ストーリーはそれほどかな。突っ込みどころが満載というか、14歳にお酒(しかもテキーラ!)飲ませちゃだめでしょ!とか飲酒運転してるし!とか繰り返される強盗のおかげでストーリーに入りこめないんですよね。原案となった「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア」も確かにこういう感じなんですけど、主人公がおっさん二人だからか、外国人だからか、あちらはユーモアとして楽しめるんですけどね。やはり舞台が日本で、原案よりちょっとシリアスに描くなら、もうちょっと徹底して欲しかったなぁと思います。豪華俳優人の割りにあんまり活かしきれてないですし、K3ホールディングスに関してはこいつら何がしたいんだ?から始まり、なんで急に部下が裏切るの!?と終始ワケの分からない組織でしたし。警察もさすがにそんなドジ踏まないでしょ~という印象がありました。とはいえ、ラストシーンは美しくてちょっと泣きそうになりますし、アンジェラ・アキの歌う主題歌もとてもいいです。マイケル・アリアスの映像美に酔いしれるためだけに見るのも悪くないと思いますよ。