ポイントにトコトンこだわる人
クレジットカードの利用者には、ポイント還元率に著しくこだわりを見せる人がいます。このような人は、0.1%単位の還元率の差でクレジットカードを切り替えることも少なくありません。また、このような傾向を煽るような還元率比較サイトも増えています。
しかし、ポイントのすべてが役に立つという保証はありません。見せかけだけで使い物にならないポイント制度も世の中には存在します。実際にそのようなポイントゲットをしたものの使おうにも使う先がなかったり、買い物に使おうとしても使える店舗が少なくて割高な買い物を強いられるようなケースもあります。
クレジットカードのポイント制度は日本独自のもののようで、諸外国のクレジットカードにこのようなものは見受けられません。また、ポイント制度自体がクレジットカードを発行している信販会社による広告宣伝の意味合いが強いので、多くのポイントを出し続けることは難しいという事情があります。
1%以下に用はない
一般的に「高還元率」と呼ばれるカードの分岐点は1%だと言われています。これ以上のカードを使うことでキャッシュバックを受け取ることが高還元率カードを狙う人の目標なのです。
高還元率だけを狙うのであれば、スーパーやショッピングセンターのハウスカードが一番でしょう。百貨店の中には購入価格の1割をポイントとしてバックするクレジットカードがあります。年会費が必要ですが、よく利用する人であれば年会費を取り戻すのは容易なはずです。
しかし、高還元率を狙う人の目標はキャッシュバックです。多少譲ったとしても広範囲に利用できる商品券との交換です。ハウスカードのポイントのようにその店舗でしか使えないポイントには用はないのです。
現在の高還元率カードの上限は、1.5%程度と言われています。信販会社が加盟店から徴収する手数料が5%程度であることを考えるとこの辺りが限界でしょう。もっとも信販会社は加盟店からの手数料より、リボ払いやキャッシングの手数料を重視しています。これらの手数料が多ければ「臨時キャンペーン」などで、一時的な高還元率にすることも可能です。
目指せ2%!!
高還元率カードの還元率は1.5%が限界だと書きましたが、やり方ひとつでもう少し上げることが可能です。その方法は信販会社が設定している「モール」を利用することです。名称は信販会社によりまちまちですが、そこを経由して通販などを利用することでポイントをたくさんもらえるというものです。
この制度を利用することで、ポイント還元率が上がります。大手通販業者はこのようなモールに必ず参加しており、1%程度のポイントアップにつながることが多いです。クレジットカード自体は1%の還元率であっても2%の還元率になりますから、有利であることは間違いありません。
また、クレジットカードによっては「提携店」を多く設けていることがあります。店舗側も広告宣伝になることから参加する例が多いのですが、やはり1%から5%程度のポイントアップが期待できます。
これらの手段を活用することで2%以上の還元率を期待することができます。ただし、これらの店舗は他の店舗より価格が割高である可能性があります。広告宣伝としてポイントアップに「協力」しているのですから、それ以外の店舗より経費が掛かり価格設定は割高になるのです。一概にポイントアップでお得に買い物ができるとも言い難いのです。
役立たずのポイントに用はない
クレジットカードのポイントの中には役に立たないものも少なくありません。ハウスカードのポイントは、そのスーパーやショッピングセンターなどを利用しなくなったら意味がありません。限られた通販業者だけで使えるポイントは、そこで買い物をすることがなかったり割高であったりすれば意味がありません。
ポイント還元率を高くしたいばかりに、このような使い物にならないポイントを提供している信販会社も実際にあります。見かけ上のポイントに釣られて申し込んだものの、全然意味がないじゃないかとガッカリすることも少なくないのです。
ポイントを追求しない富裕層
クレジットカード利用者の多くが、程度の差こそあれポイント還元率を気にしているのに対し、一般に「富裕層」と言われている人はポイント還元率をあまり気にしていないようです。この手の方々が利用しているプレミアムブランドのカードは、ポイント還元率が0.3%程度と一般的なクレジットカードの還元率である0.5%よりさらに低い還元率なのです。
しかし、彼らはポイント還元率を重視していません。それよりクレジットカードを利用することによるメリットを重視しています。要するに視点が違うのです。使い方ひとつなのですが、ポイント還元率よりはるかに「おいしい」メリットがプレミアムカードにはあります。彼らはそれを知っているのです。
ポイントより大切なもの
ブラックカードと言われるクレジットカードがあります。申込したくても「招待制」なので自分で申込することはできません。欲しい人は「インビテーション」と呼ばれる招待状が届くようにそのクレジットカードを一生懸命利用し続けるのです。
しかし、10万円を軽く超える年会費に匹敵する価値がこのカードにはあります。なんでも相談に乗って解決してくれる「コンシェルジュ」の存在は、普通の方法では手に入らないプレミアムブランドのお酒や予約困難のレストランをリザーブしてくれます。
また、ブラックカードほどではなくても「一般的な」プレミアムカードも、カード会社の特徴を生かした信じられないメリットがあります。たとえば、一流レストランのメニューが半額になったり、一見さんお断りの料亭に予約を入れたりすることも可能です。海外での信用があるブランドであれば、見知らぬ海外でも安心して旅行をすることができるはずです。
この手のプレミアムカードは、ブランド維持という観点もあるのでしょうが、年会費は有料です。しかも1万円単位の年会費は通常のゴールドカードより高い年会費です。百貨店のゴールドカードは、年会費が高くてもポイント還元という「取り戻し方」がありますが、0.3%の還元率で取り戻すことは難しいです。それ以前の問題として、ポイントで取り戻そうと考える人はほとんどいないのです。
プレミアムブランドのクレジットカードを利用している人は、ただ単にブランドだけではなくカード自体が持っているメリットを使いたくて年会費を支払っているのです。そして、そのメリットは年会費をはるかに超えるものがあります。
高還元率に興味がない人たち
このようにプレミアムブランドのクレジットカード利用者は、高還元率にあまり興味を示すことはありません。利用者の中には、利用明細書を見る必要がないほど預金残高がある人も少なくありません。そのような人にとって、10万円単位の年会費など安いものなのです。
もともとクレジットカードのポイントは「おまけ」としての位置づけでした。それが信販会社同士の競争で高還元化が差別化のツールとなってしまったわけです。ミイラ取りがミイラになったようなものですが、現金で買うよりクレジットカードで買ったほうが「お得」という意識が付いてしまった利用者は1%以上の還元率でなければ振り向いてくれなくなりました。
しかし、富裕層の方々は「おまけはおまけ」と割り切っていることが多いです。クレジットカードは自分の生活を豊かにしてくれる手段を提供してくれるエンターテイナーとしての役割を担っているのです。
0.3%のポイントでも満足する顧客
クレジットカードを利用する目的はいろいろとあります。ポイント還元率だけでクレジットカードの価値は決まらないのです。おまけだと思えば0.3%の還元率でも「お得」だと思えるものです。
富裕層の方の買い物は100万円単位です。そして、プレミアムカードの利用限度額は「事前に制限を設けていない」のです。実際には制限があるのですが、その制限は1千万単位であることも珍しくありません。ちょっと「大きな買い物」をすれば年間1億程度の利用額がある人にとって、0.3%の還元率でも30万円のキャッシュバックがあります。
30万という金額は、ちょっとした「家族のディナー」にはちょうどいい金額でしょう。ポイント還元によるキャッシュバックの使い道はこんな感じが普通ではないでしょうか。
信販会社の苦悩
激化しつつあるポイント還元率の競争は、信販会社の経営を圧迫していることは事実です。加盟店手数料の2割程度を還元しているわけですから、できればやめたいのが信販会社の本音でしょう。
しかしこの手の競争は、消費者金融の無利息キャンペーンのように、一度入り込んでしまったらやめることは難しいです。やめた途端に顧客が減少することは目に見えているからです。クレジットカードのビジネスモデルは、できるだけ多くの人にカードを発行し、その発行枚数を武器にして加盟店を増やしていくものです。顧客の減少は信販会社の営業では致命傷になりかねません。
広告宣伝費でもあるポイントの発行による経営の圧迫と営業拡大、相反する2つの問題点が信販会社の悩みの種です。しかし、解決策は見いだせないことが多いのです。
高還元率は使いにくさとのトレードオフ
高還元率カードの還元方法を子細に検討すると、実際に還元してもらおうとすると結構面倒なことがわかります。高還元率と言われるカードの中には、50万円ほどの買い物をしないと「高還元率」での交換ができないようになっていたり、ポイントの有効期限が1年程度と短いことも少なくありません。失効させることを狙っていることを伺わせます。
また、還元されるポイントも必ずしも現金に交換できるわけではなく、商品券などとの交換になっていることが多いです。交換の仕組みも入り組んでおり、どのような方法で交換するのがベストかはわかりにくいこともあります。こうしてすべてのポイントを還元しなくて済むようにしていることもあるのです。
もちろん高還元率カードにこだわる人は「最大の効率」で交換することを狙いますから、ポイント還元のルールを子細に調べて自分の買い物のスケジュールをコントロールしています。こうすることでポイントを効果的に集めて高還元率でキャッシュバックを受け取るのです。
何もしなくても1%引きのお気楽カード
ポイントの管理は利用者も面倒ですが、信販会社側も面倒であることは間違いありません。失効するまでは、ポイントは支払の可能性があるため管理をする必要があります。しかも、顧客ごとに管理をすることは大変なのです。
信販会社の中には、このような手間を最低限にするために請求の都度1%の値引きをしているクレジットカードを発行していることもあります。この方法であれば信販会社も管理のことを考える必要はありません。
当然利用者もお気楽に使うことができます。ポイントの計算や請求忘れによる失効を防ぐことができるためです。ポイントが失効すれば信販会社の経費は節約できますが、利用者はいい気持ではないでしょう。変にポイント還元をケチるよりは、太っ腹で還元した方が利用者も喜んでくれますから利用額も増加するのです。
勝負に出ない老舗信販会社
こんな勝負が繰り広げられる中、老舗であるJCBやニコスのような信販会社は勝負に参加しません。この手の信販会社はポイント還元率が0.5%程度と平均的です。そして、一般カードであっても年会費を徴収しています。
老舗の信販会社は、昔からの営業により加盟店も多いし、それなりのクレジットカード発行枚数も維持できています。このような信販会社がポイント還元率を上げたり、年会費を徴収する際は、たいていリボ払い専用カードです。リボ払いの手数料が見込めるためポイント還元率を上げたり、年会費を無料にしてもペイするのです。
老舗の信販会社は、高還元率で勝負をせざるを得ない信販会社に比べて余裕があります。だからこそ勝負に出る必要がないのです。高還元率のクレジットカードは確かに人気がありますし、利用額も多くなります。そのため信販会社としては手を出したくなるものですが、一種の「毒饅頭」としての性格も否定できません。
老舗の信販会社は老舗なりに「経験則」があります。このような消耗戦に出たところで、あまり営業上のメリットがないことに気が付いているのです。