自覚症状の少ない性病(STD)の感染対策

性病は、性行為で感染する病気のことで、以前は梅毒などの症状が強いものが中心でしたが、現在は淋菌感染症、性器ヘルペス、クラミジアなど自覚症状が少な
く、感染に気付きにくいものが主流となっています。

女性は婦人科を受診します

排尿痛、かゆみ、発赤などの症状が現れやすい男性の性病に比べて、女性の性病の症状は、おりものの増加や陰部の違和感など自覚しにくいものが多いため、感染に気付かずにパートナーに感染を広げたり、症状が進行して不妊の原因となることがあります。また母子感染のリスクもあります。

性病は10~20代の若者の性意識の低下や性行為経験の低年齢化に伴って、感染者も低年齢化の一途を辿っています。性器クラミジア感染症、淋菌感染症の患者は、10代前半から増加カーブを描いており、20代前半でピークを迎えます。

感染者数の増加が顕著な性病は性器クラミジアで、この10年で急増しています。特に、女性における罹患率が増加しています。男性に多い淋菌感染症も、近年は女性で増加傾向を示しています。

性器クラミジア感染症は、クラミジア・トラコマシチスを病原体とする病気です。潜伏期間は1~3週間となっており、女性は子宮頚管炎を発症しますが、男性と比べて症状が軽度なため、放置されたまま感染が長期化して不妊や子宮外妊娠の原因となることがあります。妊娠中に感染すると産道感染で、生後、新生児結膜炎や肺炎のリスクがあります。

主な症状としては水様・透明のおりものの増加、不正性器出血、下腹部痛などです。婦人科の検査では、子宮頚管から分泌物を採取し、特殊な方法でクラミジアを検出して診断を行います。治療には抗生剤(マクロライド系、テトラサイクリン系)が使用されます。

淋菌感染症はクラミジアに次いで患者数が多くなっています。潜伏期間は2日~数日とされています。悪臭伴う膿性のおりものの増加、外陰部のかゆみなど主な症状ですが、自覚症状がほとんど感じない女性も多いため、感染の長期化で不妊などの恐れがあります。

産科で性病の治療を受ける際には、パートナーと一緒に行うことが大切です。本人の治療が完了しても、パートナーが適切な治療を受けていないと、再感染してしまうからです。治療薬には、それぞれの病原体に対する抗菌薬や抗ウイルス薬などが用いられますが、自己判断で服用を中止せずに、完治するまで続けましょう。

性病の感染を予防する最大の方法は、信頼できる特定の相手とだけ性交渉を持ち、正しくコンドームを使用することが重要です。

海外旅行でも要注意の新型インフルエンザ

新型インフルエンザ(A/H1N1型)が世界的な流行を見せ、国内でもその傾向が見られたことを受け、インフルエンザ治療薬の市場は急速に拡大しました。同市場の2008年の売上は70億円でしたが、新型因府レンザが大流行した2009年には360億円と大幅な伸びを示しました(中外製薬の「タミフル」の行政備蓄向けは除く)。

感染予防には手洗いとマスクの着用が大切

従来、経口剤のタミフルが圧倒的な市場シェアを誇っていましたが、未成年者のインフルエンザ患者で薬剤との因果関係は不明であるものの服用後に異常行動が見られた事例の影響を受け、緊急安全情報が出されこともあり、代わってグラクソスミスクラインの「リレンザ」が急速に普及してきました。

2010年には新薬も複数登場しました。塩野義製薬の「ラピアクタ」は、タミフルとリレンザと同様のメカニズムを持つノイラミニダーゼ阻害薬ですが、点滴投与のため嚥下困難な患者にも投与が可能となりました。また、第一三共の「イナビル」も吸入治療薬という新しい製剤で承認されました。

さらに、富山化学のファビピラビル(一般名)はウイルスのRNAポリメラーゼに作用してウイルスの複製を阻害する経口治療薬で、現在国内での承認申請を行っています。新型イフルエンザの変異によってタミフルに耐性を示すタイプも一部確認されていることや、新型インフルエンザに対する一定の効果もあわせて期待されていることから、既存治療薬に加えてこれらの製品に対する潜在的なニーズは高いとされています。

日本を含むアジア地域での流行が今後も予想されるため、海外旅行が不安な方も多いと思いますが、出発前のワクチン接種と現地での手洗いとうがいをしっかり行えば大丈夫ですし、もしも体調が悪くなっても旅行添乗看護師(ツアーナース)が病院での診察を受けるべきかの判断やケアを行ってくれますので過度に心配する必要がありません。

日本での推計累積患者数は約2100万人、死亡者は200人を越えていますが、諸外国と比較した場合では人口あたりの死亡者数は少なくなっています。政府は厚生労働省は、国民生活への影響を最小限に抑えつつ感染拡大を防ぎ、基礎疾患があるヒトを守ることなどを目標に、検疫体制の強化、発熱外来の設置、ワクチン対策などを実施しました。

ワクチン対策では、医療従事者や妊婦、基礎疾患患者を優先とするワクチン接種を順次開始しました。さらに国内産ワクチンでは供給量が不足することから、海外の製薬企業から9,900万回分のワクチンを確保するため、グラクソスミスクラインとノバルティスファーマと輸入契約を結び、薬事法の特例承認を取得しました。


メタボリックシンドロームを発見する特定健診

不規則な食生活や運動不足などの理由から、糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病が若い世代に急増しています。病気の増加に比例して、国の医療費も増大指定射るため、厚生労働省は対策として、生活習慣病を招きやすいメタボリックシンドロームに焦点を当てた新しい「特定健診・特定保健指導」という制度をはじめました。

看護師

職場などで行われる従来の健康診断に比べて、検査項目はかなり限定的となりました。これは検査の照準をメタボに定めているためです。なによりも大きな特徴は、健診結果をもとに改善すべき生活習慣(食事・運動・喫煙など)を医師や保健師、管理栄養士によって指導される点にあります。これが特定健康保険指導です。対象者は具体的な目標が設定され、定期的な状況確認の場も設けられています。

特定健診の対象となるのは、40~74歳までの人で、サラリーマンや公務員などのお勤めの方やその家族は、銃新井の職場健診と同様に、検査通知があります。自営業や退職者、その家族の場合は、住民健診と同じように、お住まいの自治体から通知がありますので、そこで指定されている医療機関を受診して検査を受けることになります。

項目は医師による問診にはじまり、身長・体重の測定、血圧測定、血液検査、尿検査などが行われますが、新たに腹囲の測定が加わりました。腹囲の基準値は男性が85cm未満、女性が90cm未満です。この基準値を超えて、かつ血圧、血中脂質(中性脂肪、HDLコレステロール)、血糖(空腹時血糖もしくはHbAic)のうち2つ以上が、基準を超えていたらメタボリックシンドロームと診断されます。

メタボリックシンドロームと診断されても、ただちに病気であるとはいえません。血糖や資質、血圧などの各検査項目には「医療機関の受診が勧められる基準値」があり、これを超えていれば、糖尿病、脂質異常症、高血圧などの病気ですから、医師の指導を受ける必要があります。メタボリックシンドロームは放置していると、動脈硬化や血管の老化を早め、いずれ生活習慣病になってしまいます。

薬害を防止するための医薬品安全性関連情報

非加熱血液凝固因子製剤によるエイズ、ヒト乾燥硬膜によるヤコブ病など、数々の薬害事件を経て、遅まきながら日本でも厚生労働省による医薬品の監視体制が強化されてきました。医薬品の適正使用を万全にするために、同省が重視するのが「医薬品等安全性関連情報」の発信です。

製薬メーカーも報告

医薬品の安全性を確保するため、その開発段階における治験を厳格に行い信頼性の高いデータを収集することはもちろん大切ですが、治験では症例数が限られます。そこで、過去の薬害の事例を教訓として、医薬品が市場に出て実際に患者さんに投与されてから行う追跡調査(市販後調査)も重要視されるようになり、予期せぬ副作用があった場合には直ちに報告されるシステムが構築されています。

全ての医療機関と薬局は、医薬品の副作用などに関する情報を厚生労働省に直接報告することが義務付けられており、蓄積されたデータは「医薬品・医療器具等安全性情報」として、厚生労働省のホームページに掲載されることになります。

厚生労働省に寄せられる症例には、①副作用として疑われるものの、実際に該当する症例が臨床現場からは寄せられていない「未知症例」として扱われ、医師や薬剤に注意を呼びかけるもの、②副作用の疑いが報告され、使用上注意すべき内容が変わった「既知症例」として詳細な情報が提供されるもの、③未知と既知の両方をまとめ、医薬品ごとの副作用と年度別の発症数を告知する「報告副作用一覧」があります。

医療現場だけではなく、製薬企業も自社が取り扱っている医薬品の情報を収集し、「緊急安全情報(通称:ドクターレター)」として厚生労働省に報告を行い、同省および医薬品医療機器総合機構から速報としてネットで配信されたり、医療関係者に書面で配布されます。

そのほか、注射用なのか内服用なのか紛らわしいアンプル剤など、容器や剤型で投薬を間違いやすい薬剤の情報、名称が似ている薬(Cs拮抗薬のペルジピンと狭心症薬のペルサンチン、強心薬のボスミンと抗菌薬のホスミシンなど多数)など、医療事故を起こす可能性があるものについては「医薬品に関連する医療事故防止対策」というページで注意喚起を行っています。

FAQ:看護師の配置基準で決まる入院基本料

旅行や出張の際に利用する機会の多いホテルは、その立地条件やサービス内容、ブランドなどによって宿泊料金は大きく異なりますが、私たちが大きな病気や怪我で医療機関に入院したときに支払う入院基本料にも一定ではなく、大きな差があります。それでは何を基準に病院の入院基本料金は決定されるのでしょうか?

看護師の多い病院に手厚い制度

病院の場合は、入院している患者さんに対して看護師が何人配置されているかによって、差が付くようになっています。一般病院の入院基本料は15:1~7:1まで4段階が定められており、入院患者さん7人に対し看護師を1人という7:1看護がもっとも多くの基本料(1,555点/日 1点=10円)となっています。

7:1入院基本料を算定するためには、当該病院の職員の7割が看護師であること、病棟の平均入院日数が19日以内であること、職員一人あたりの月平均の夜勤時間が72時間以下である、といった基準をパスしえいる必要があります。看護師だけ基準を満たしていても、医師の配置基準を満たしていない病院は減額されます。

病院の経営という側面からこの制度を見てみると、10:1と7:1では看護配置は1段階しか変わらないもの100床差でざっと1億円も収入が違うといわれています。そのためより高い看護基準を満たす体制を整えることは、死活問題にもなります。また患者さんから見ても、看護師が多いということは患者さん1人をケアできる時間も増える、室の高い医療を受けることができるなどのメリットがあります。

しかし、夜勤の負担をはじめとした苛酷な勤務環境を原因に離職する看護師が後を絶たないため、医療界は慢性的な人材不足になっています。2006年の診療報酬改定で、新たに7対1入院基本料が導入された際には、経営体力に余裕のある大学病院や都市部の大病院が、新基準をクリアし増収につなげようと、看護師の採用へ一早く動いたため、中小病院はまずます人材が不足することになりました。

病院の経営を安定化させ、質の高い医療を継続的に提供するためには、育児休暇や短時間正職員制度、夜勤の軽減、時短勤務などで看護師のワークライフバランスを実現できる働きやすい病院の体制を整備することが急務となります。看護師の離職率は、政令指定都市、東京23区、小規模、医療法人の病院で高くなっており、逆に短時間正職員制度や新卒スタッフの教育体制が充実している病院では利殖が少ない傾向となっています。

少子化による労働人口の減少が加速することから、国は2008年から東南アジア諸国と経済連携協定を締結し、看護師と介護福祉士候補の受け入れをはじめましたが、言葉の壁を乗り越えて、短期間のうちに国家試験に合格する必要があるため、看護師不足の抜本的な解決にはなっていません。そもそも、厚生労働省は医療現場の労働問題に長年目を向けてこないで放置しておいて、切羽詰ったら海外の人材に頼るという姿勢に問題があり、大きな批判が寄せられています。