新型インフルエンザ(A/H1N1型)が世界的な流行を見せ、国内でもその傾向が見られたことを受け、インフルエンザ治療薬の市場は急速に拡大しました。同市場の2008年の売上は70億円でしたが、新型因府レンザが大流行した2009年には360億円と大幅な伸びを示しました(中外製薬の「タミフル」の行政備蓄向けは除く)。
従来、経口剤のタミフルが圧倒的な市場シェアを誇っていましたが、未成年者のインフルエンザ患者で薬剤との因果関係は不明であるものの服用後に異常行動が見られた事例の影響を受け、緊急安全情報が出されこともあり、代わってグラクソスミスクラインの「リレンザ」が急速に普及してきました。
2010年には新薬も複数登場しました。塩野義製薬の「ラピアクタ」は、タミフルとリレンザと同様のメカニズムを持つノイラミニダーゼ阻害薬ですが、点滴投与のため嚥下困難な患者にも投与が可能となりました。また、第一三共の「イナビル」も吸入治療薬という新しい製剤で承認されました。
さらに、富山化学のファビピラビル(一般名)はウイルスのRNAポリメラーゼに作用してウイルスの複製を阻害する経口治療薬で、現在国内での承認申請を行っています。新型イフルエンザの変異によってタミフルに耐性を示すタイプも一部確認されていることや、新型インフルエンザに対する一定の効果もあわせて期待されていることから、既存治療薬に加えてこれらの製品に対する潜在的なニーズは高いとされています。
日本を含むアジア地域での流行が今後も予想されるため、海外旅行が不安な方も多いと思いますが、出発前のワクチン接種と現地での手洗いとうがいをしっかり行えば大丈夫ですし、もしも体調が悪くなっても旅行添乗看護師(ツアーナース)が病院での診察を受けるべきかの判断やケアを行ってくれますので過度に心配する必要がありません。
日本での推計累積患者数は約2100万人、死亡者は200人を越えていますが、諸外国と比較した場合では人口あたりの死亡者数は少なくなっています。政府は厚生労働省は、国民生活への影響を最小限に抑えつつ感染拡大を防ぎ、基礎疾患があるヒトを守ることなどを目標に、検疫体制の強化、発熱外来の設置、ワクチン対策などを実施しました。
ワクチン対策では、医療従事者や妊婦、基礎疾患患者を優先とするワクチン接種を順次開始しました。さらに国内産ワクチンでは供給量が不足することから、海外の製薬企業から9,900万回分のワクチンを確保するため、グラクソスミスクラインとノバルティスファーマと輸入契約を結び、薬事法の特例承認を取得しました。